
――神道は、一神教(いっしんきょう)ではなく、八百万(やおよろず)の神々がいらっしゃると考えます。明治神宮の場合は、明治天皇と昭憲皇太后をお祀りしています。日本では偉人を神として祀ることも少なくありません。
――そもそも神道とは、仏教が日本から伝わる以前からあった日本独自の信仰ですので、日本人は生活の一部として、初詣やお宮参りや七五三というような年中行事の中にも根付いていると考えられます。そのように深い関わりの中で、神社にお参りするときも、宗教儀礼や宗教儀式を行うためという感覚よりも、人生儀礼のひとつとして参拝する感覚の方が強いと思いますね。
例えば、お正月に各家庭で門松を立てたり、注連縄(しめなわ)をはったり、鏡餅を飾ったりという行為も、世俗的な信仰というよりは、日本人の生活、慣習の一部として捉えられている部分が大きいと思います。神道もどちらかというとそういった部分に近いと思います。
――神社は聖域であり、神聖な場所ですから、お参りする際は、知らず知らずにたまってしまった罪穢れ(つみけがれ)を、清める必要がありました。
かつては神社に参拝する際に、海や川で禊(みそぎ)といって、その水で身を清めるというのが本来の形でしたが、現在では、その代わりとして、手水舎(てみずしゃ)で、手と口を清めて参拝するという形になりました。


――参道に敷いてある玉砂利(たまじゃり)にも深い意味があります。昔は、河原で心身を清めるという習慣もあり、参道に玉砂利を敷くことによって、それを再現しているとも考えられます。砂利を踏みしめることで、ざっざっという音がしますよね。これは、歩きながら身を清めるという意味があります。
鳥居は、本来そうした境内の神域と、街との境界線にあたります。鳥居をくぐり、手水をして心身を清め、参道を歩きながら心を鎮めていくというご神前でお参りするための準備を、一連の流れの中で行えるようになっているのです。


――日本には、古来から"ハレとケ"という考え方があり、お正月やお祭りなどは"ハレ"に当たります。明治神宮では、秋の大きなお祭りの前に、参籠(さんろう)という一夜お籠り(おこもり)をして身を清めますし、参拝の方も参列される6月と12月にある大祓(おおはらえ)という儀式では、半年の罪穢れを祓い(はらい)ます。年末の大掃除や煤払い(すすはらい)には、新年に神様を迎えるための準備として、空間や身を清めてから新しい年を迎えましょうという意味が含まれているのです。このように日本人には、何かを始める一つ前には、心身や場を清めるという習慣があるのではないでしょうか。






――お正月を迎えるには、まず、お部屋をきちんと掃除をして清め、新しいお札(おふだ)をお祀りします。お札には、神様の御印である御神璽(ごしんじ)があり、神社で祀られている神様のご分霊です。そして白い器に米、塩、水、それからお神酒(おみき)をお供えします。つまり日本人の食生活に必要なものをお供えするというのが基本になっているのです。
お祭りが終わると、直会(なおらい)といって、神職や参列者はご神前にお供えしたお酒を頂きます。
明治神宮(めいじじんぐう)