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スペシャルインタビュー 美術監督 種田陽平
映画「スワロウテイル」「不夜城」をはじめ、「いま、会いにゆきます」や「KILL BILL vol.1」など、その独特の感性で多くの人を魅了し続ける美術監督、種田陽平氏。三谷幸喜監督の最新作「THE有頂天ホテル」では、登場人物それぞれが織りなすドラマと共に、もう1つの主役“日本最大級のセット”HOTEL AVANTIを手掛け、調度品のひとつひとつにまで至るこだわりは必見です。国内外を問わず活躍中の種田氏に、空間づくりについてその世界観をスペシャルインタビューしました。
前編中編後編

Q:"チーム種田"みたいな人はたくさんいらっしゃるのでしょうか?
種田氏:スタッフは毎回映画によって変えています。アシスタントやデコレーター、いわゆる装飾とか小道具さんとかですね。そういう多くのスタッフと打合せを重ねます。ソファの生地を選んで張り替えたりとか、細かい作業の指示もします。次は時代劇なので、京都から人を呼んだりします。自分で指名する場合も、人に紹介してもらう場合もあります。
Q:「THE有頂天ホテル」のセットは最初にミニチュアを作って、CCDカメラで見ながら設定を決めていったと聞きましたが?
種田氏:毎回ミニチュアを作っている訳ではありません。日本人はシミュレーションが得意で、模型を作らなくてもCGで出来てしまうことも多い。ひとつひとつハンドメイドで模型を用意する必要はないんです。でも、アメリカ人は模型がないとダメだったりする。「キル・ビル」もそうでした。
あと、僕は白模型が嫌いなんですよ。だって実際は白くない。白模型は一見想像力をかき立てるようで、実はかき立てられない。僕はある程度イメージが決まったところで色を付けてしまいます。人物も置いて、それを後で実際のセットと比べてみると、かなり同じようにシミュレーションが出来ていたことが実感できる。
Q:そういう形でシミュレーションした方が効率的に進行できるのでしょうか?
種田氏:前もって考えをぶつけ合うことができるので、結果、進行もスムーズですね。イメージ画を見たり、図面を見たりしても、実際にはあまり具体的には考えられない。それでセットができてから、あそこの壁が邪魔だとか、ここにドアがない、なんてことになりがちですが、模型があることで小さなカメラで人物の動きを確認したりもできますし。
例えば、アクションをどこでやるか、ということを模型の中で考えて、じゃぁ、ここで切られてバタッと倒れる。というところまでシミュレーションできるので、それに近い形で撮影の準備もできる。セットを作る側と演出側とが一体になってより良くしようと模索できるところがいいんです。
Q:セットを作る際、設計と内装というのは全く違う知識が必要だと思うのですが、どうやって身に付けたのですか?大学のときは油絵科だったということですが。
種田氏:それは、経験ですかね。学生時代には勉強していませんから。僕らの業界は、舞台美術コースや空間デザインコースなど専門の学校を出た人が多いんですが、僕はもともとその方向に進むつもりだった訳じゃなくて、単に映画が好きでたまたまこうなっただけなんです。大学のときに映画研究会に所属していて自主映画を撮ったりしてたんですが、それが結構楽しかったんですね。
ARTWORKS
いま、会いにゆきます
秋穂家ダイニングルーム
秋穂家ダイニングルーム
秋穂家外壁
秋穂家外壁
廃工場
廃工場
product design by yohei taneda

Q:種田さんの作品は、映画美術のレベルアップに大きな影響を与えたと思うのですが、ご自身ではどう思われますか?
種田氏:大事なことは、雰囲気造りと世界観、あともうひとつ、今不足している物を与える、ということなんです。時代との関係はとても深くて、1960年代に面白いデザインや空間はもちろんあったんですが、それが時代とどう合っていたのか、ということが大事で、「スワロウテイル」ではあの時代に不足していたと思われる空間を映画の中で描いたんです。
すごくメジャーになっているデザイン空間を映画の中で与えると、もうその時点で古くなる。だから、今無い、不足しているものを映画の中で見せていく。というのが映画の面白いところだと思う。
じゃぁ、今は何が不足しているのか、と聞かれても毎年変わるので分からないけど、例えば「いま、会いにゆきます」では、貧乏だけど希望がある空間、を作ろうと思いました。それは監督が考えていくテーマとはちょっと違う。監督が考えていくのはたぶん、もっと映画の本質的な部分で、僕が考えるのはもっとバックストーリー的なテーマというか…。
次は何だろう。時代劇ではどういうものを、っていうのはまだ自分の中では出てきてないですけど、過去にたくさん作られた時代劇のようにはしないと思う。それをやったらたぶん下手だと思うし。初めてなので20本やった人と比べてあきらかに差がある訳ですから、違うものを作ると思います。でも、あんまりグラフィックにやるつもりはありません。日本人はグラフィックにやるのは上手で、世界でもトップレベルだと思っていますし、デザインだけじゃなくて、空間を演出したり、小物や道具を仕上げることに関してもレベルが高い。
だからあえて、僕はその方向では考えていません。むしろ新しいけど古いとか、100年後に子供が見て刺激されたり、面白いと思うようなものを作りたいんです。良い映画になれば残るので。残していきたいというよりも、そういう考え方でやっている、と言った方が正しいかな。
21世紀後半になれば、僕らの映画は21世紀初頭の作品ってことになる訳ですが、そういう中でもまだ光ってる映画にしたい、ということを意識してやってる。ファインアートと違って、古くなっていくのも早いだろうから、少しでも普遍的なものを作りたいな、と思っています。
interview end

news
『フラガール』2006年9月、全国一斉ロードショー
『69 sixty nine』で注目を浴びる李相日監督の最新作『フラガール』に種田陽平氏が美術監督として参加しています。

昭和40年、炭鉱閉鎖の危機に直面した北国のまちに、それまでやけどの原因として捨てていた温泉を利用してハワイを作ろうという起死回生のプロジェクトが持ち上がりました。目玉となるのは当時誰も見たことがなかったフラダンスショー。素人の炭鉱娘たちをプロのダンサーに育てるため東京からダンス教師がやってくるところから物語がはじまります。常磐ハワイアンセンター(現:スパリゾートハワイアンズ)設立を支えた人々の実話を基にした物語です。

70年代〜80年代、エネルギー革命によって、世界中の炭鉱が閉鎖されました。英国では、1984年以来、閉鎖された炭鉱は140.25万人が失業したといいます。それによって、共同体、家庭生活が崩壊し、多くの人々が希望を失った時代。この日本の炭鉱のまちで起こった出来事は、世界で唯一の、再生の物語です。

東京からダンスを教えにやってきた先生に松雪泰子、炭坑労働者に豊川悦司、フラダンスショーに向け奮闘する炭坑のまちの女の子に、蒼井優、山崎静代(南海キャンディーズ・しずちゃん)らが登場。種田陽平氏は当時の炭坑住宅と、フラダンサーたちの晴れの舞台などをこの映画で再現しています。

『フラガール』公式ウェブサイト
http://www.hula-girl.jp/

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