|
――僕は作品を通じて、自分の表現したいことを、できるだけ多くの人に受け入れて欲しいと思っています。アートとしてあるものが、"普遍性"を持つまま、もっと社会に出回ればいいなと。そのための手がかりを探そうと思い辿り着いたのが、作品をより身近に感じてもらうために、食べられるものに置換えてみる、ということでした。そして和菓子は、余計なものを削ぎ取る作業を経た自分自身の作品と、とても似ていたのです。僕は祖母も共に暮らしていたからか、日本的なしきたりや行事に馴染んで育ちました。そうした潜在的な意識が、自然に和菓子と結びついたのかもしれません。
――核になるのは"考え"です。作品のテーマを職人とじっくり共有しながら、少しずつイメージに近づけていきます。こうして自分以外の手で作っていく場合、最初は違和感があっても、理念が一緒ならば出来上がるものは作品として成り立つと思っています。単に色や形の模倣ではなく、和菓子の"精神"を残す。そこに見る側にとって、面白いものがあるのではないでしょうか。菓銘は漢字3文字で、イメージをどんどん広げていく手助けになる、やさしいものになるように意識しています。
――2005年、初めて作品と和菓子を対峙させた個展「透過〜和菓子展〜」では、実際に和菓子をふるまいました。口に入れるという行為は、その舌触りや味さえも含めて、まるで"空"や"宇宙"を閉じ込めた作品を食べているような、壮大なものを小さくして体内に入れることへの驚きや喜びといった感覚を生み出してくれたのです。
2006年11月には、和菓子をアーティスト虎屋文庫資料展「和菓子アート展」に参加。同年12月、個展「内に見る」インスタレーションでは、さらに写真を展示に加えました。和菓子をアップにする事で、私の樹脂作品の理念に近ずき、和菓子本来の概念も抽出できるのではないかと感じたからです。和菓子は今の僕にとって、自分を表現するための、奥深くて本当に面白いものなのです。
|