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昔、和菓子は、一人一人のお客様に合わせたあつらえをして、お売りしていました。この"和菓子の原点"を現代に生かせないかという、現社長(虎屋17代当主 代表取締役社長 黒川光博氏)の熱い想いから、2003年9月に「和菓子オートクチュール」はスタートしました。
もとより、長くご愛顧頂いているお客様は、和菓子の知識も豊富で、"今度はこんな風なものはできないか"というご要望をいただいておりました。そのような高いご期待にお答えしていくことも、わたしたちの役割です。この想いを、あらためて"和菓子オートクチュール"と名づけて、より多くの皆様にもご案内するようになったのです。いままでに100件以上のご相談をいただき、中には、毎年ご利用いただくお客様もいらっしゃいます。
赤坂本店、京都一条店の和菓子オートクチュールコーナーにて、実際に専門の和菓子職人がお会いして詳しくご要望をお伺いします。ご来店前に、あらかじめご連絡をいただければ幸いです。ご用途、デザイン、味、大きさ、ご予算など、お召し上がりの場面も想定しながら方向性を決めていきます。次に、試作品を写真やメールでご確認いただきます。そして商品をお受取りいただく流れになります。最初は具体的なイメージをお持ちでない場合でも、対面することで、会話の中からお客様のご要望に近づけていくことができます。
いままでご要望で多かったのは、長寿のお祝いやお誕生日祝い用として皆様でお召し上がり頂けるもの。贈り物をお受取りになった方が、「羊羹」や「最中」のとらやの包装紙の中から、洋風のケーキのような和菓子が出てきたら驚きますよね(笑)お子様がアレルギー体質なので、乳製品を使用していない和菓子で、ケーキを作りたいというご要望もありました。
作り手としては、はじめからこれを作ろうというより、試作を実際に作る中でのひらめきを大切にしています。もちろん考える過程には大変さもありますが、商品をお納めして、お客様に喜んでいただいたときは、作った甲斐があってよかったなあと、とてもうれしく思います。
『和菓子オートクチュール』サービスを開始する前の出来事です。本店にご来店いただいたお客様が、夕日にちなんだお菓子をお探しになっていました。しかし、なかなか思いどおりのものがないとのこと。そのため、具体的なご要望を私がお伺いさせていただくことになりました。実は、ご友人と夕日を見に行くことになっていたのが、その方が急にお亡くなりになり、果たせなかった約束を和菓子にして、友人を偲ぶお茶会を予定されていたのです。そこで、このお気持ちをお受けし、夏の海に夕日が落ちていく様子を表現した棹菓子を、オリジナルで作らせていただいたのです。『オートクチュール』の大切さや意味合いを実感したエピソードです。
『たくさんのお客様に、和菓子の魅力を発見して頂きたい。ご希望の和菓子が既存商品になかった場合に"申し訳ございません"ではなく、"どうしたら、お客様に喜んで召し上がって頂けるのか、さらにがんばってみよう。工夫して、いろいろなものを作ってみよう"』これが、私たちのオートクチュールではないかと思います。
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